知財履歴書の書き方

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弁理士や特許技術者・商標実務者は非常に専門性の高い職業です。特許事務所への応募において、履歴書の書き方に工夫を凝らすことが重要です。特許事務所側においても、履歴書を十分に読み込んでも、生じている欠員の適合性を判断できない場合があります。そのような場合は非常にもったいないことになります。特許事務所への応募での履歴書のポイントをいくつか挙げます。

応募方法の今を知る

現代の応募方法について再確認することは非常に重要です。インターネットには多くの情報があり、応募の常識も時代とともに変化しています。現在、応募の際には履歴書と職務経歴書のセットが一般的です。これにより、応募者の背景や経験を詳しく伝えることができます。特に、特許事務所など専門性が求められる職種では、職務経歴書の詳細が重視されます。

以前応募したときの常識が、現在では通用しない場合があります。例えば、手書きの履歴書が主流だった時代から、現在ではデジタル応募が一般的になっています。インターネット上の求人サイトや企業の公式ウェブサイトで最新の応募方法を確認し、「今」の基準に合わせることが重要です。

電子形式で作成する

年配の方々には、履歴書を手書きで作成しなければならないと思い込んでいる方が多いです。これは、長年一つの会社に勤めていて、転職活動の経験が少ない場合、昔の慣習に基づく考え方が影響しているのかもしれません。しかし、現在ではこれは誤りです。履歴書はワードで作成するのが一般的です。

履歴書のワード形式のテンプレートはインターネット上に多数公開されています。これらのテンプレートを活用して、パソコンで履歴書を作成することが推奨されます。これにより、清潔で見やすい履歴書が作成できるだけでなく、書類作成の効率も向上します。同様に、職務経歴書もワードで作成することが重要です。

ワードファイルを活用することで、現在のITスキルを証明することもできます。特許事務所においては、書類作成や編集の能力が求められるため、ワードファイルを効果的に使いこなせることは大きなアピールポイントになります。手書きの履歴書や職務経歴書では伝わりにくいプロフェッショナルな印象を、ワードで作成された書類で確実に伝えましょう。

個人のメールアドレスを用意する

転職活動において、個人のメールアドレスをきちんと用意することが重要です。現在勤めている会社のメールアドレスを使用してはいけません。転職活動は、勤務先とは関係のない個人の事柄であり、プライベートなメールアドレスを使うのが常識です。Gmailなどのフリーメールアドレスを使用することをお勧めします。また、古いメールアドレスの中には、パソコンからのメールをブロックするものもあります。このようなメールアドレスは使用すべきではありません。

特許事務所側からの返信が届かないといった事態を避けるためにも、信頼性のあるメールアドレスを選びましょう。実際に、応募メールを送ったものの、特許事務所側からの返信が迷惑メールフォルダに入ってしまい、それに気づかずにチャンスを逃すケースもあります。迷惑メールフォルダも定期的に確認し、重要なメールを見逃さないようにしましょう。

転職活動は人生の重要な転機です。そのため、メールアドレスの管理は慎重に行い、迅速かつ確実に連絡を取れる環境を整えることが大切です。応募先とのコミュニケーションを円滑にするためにも、個人のメールアドレスを適切に使用しましょう。

志望職種によって書き方が変わる

実務者(弁理士・特許技術者)を志望する場合と、特許事務員を志望する場合とでは、履歴書においてアピールすべきポイントが異なります。詳細を以下にまとめます。

実務者の方へ──技術分野を明確に記載

履歴書では、学歴や職務経歴の時系列の概略しか書けません。そのため、実務者(弁理士、特許技術者)で、実務経験がある方は職務経歴書で、知的財産の分野でどのような業務に携わってきたかをしっかり書きましょう。未経験者の方は、学生のときの専門分野を詳しく書くことが大切です。

実務者の場合、特許事務所からみて、応募者の技術分野が明確でない場合が多くあります。特許事務所は電気、機械、化学、バイオの部署に分かれており、どの部署の面接官が出るべきかを判断するためにも、技術分野を、第三者にわかるように記載したほうがいいと思います。

たとえば、機械専門なのに化学のパートナーが面接してしまうとミスマッチが生じます。中間的な技術分野であれば、機械と化学の両方を書いても問題ありません。また、技術分野が定まっていない場合でも、志望する技術分野を記載すると良いでしょう。お互いのミスマッチを避けるためにも、具体的な技術分野の情報を詳しく記載することが重要です。これにより、特許事務所側も適切な面接官を選びやすくなり、スムーズな採用プロセスが進行します。

実務者の方へ──文系で実務者を目指す方へ

文系出身の方で実務者を目指す方は、技術分野の専門性が明確でないことが多いです。そのため、職務経歴書には現在の職業で関わっている技術や、勉強している技術分野を詳しく記載しましょう。具体的な業務内容やプロジェクトの詳細を示すことで、自分がどのような技術に携わってきたかを明確に伝えることが重要です。

例えば、マーケティングや法務、経営企画などの職種であれば、それぞれの業務で扱った技術的な側面を具体的に説明します。マーケティングであれば、デジタルツールやデータ分析のスキル、法務であれば知的財産権の取り扱いや契約書作成の経験などを詳しく書くと良いでしょう。

また、独学や専門学校で学んだ技術分野についても記載すると、技術への理解があることをアピールできます。特に知的財産分野での実績や関連する資格があれば、それを強調することで、自分の専門性をより明確に伝えることができます。

こうした詳細な情報を提供することで、特許事務所が求める技術分野や業務内容に自分が適合するかどうかを判断しやすくなります。結果として、自分の適性をアピールしやすくなり、より良い転職活動を進めることができるでしょう。

特許事務員を目指す方へ──事務経験や英語力の伝え方

特許事務員(いわゆるパラリーガル職)としての就職・転職を目指す文系出身の方にとっては、知的財産の専門知識よりも、これまでの事務経験やPCスキル、英語力などをどのようにアピールするかが大切になります。

たとえば、前職が銀行や保険会社などの金融機関だった場合は、「顧客対応」「契約書の作成・チェック」「各種申請書類の受付・処理」など、正確さとスピードを求められる事務処理経験を具体的に書いてください。こうした実務経験は、特許事務の現場でも大いに活かせます。

また、営業事務や総務、経理補助などのご経験がある方は、「Excel・Wordを使った書類作成」「スケジュール管理」「社内外との連絡調整」など、普段の業務で行っていたことを可能な限り具体的に記載することがポイントです。ただ「事務職」と書くより、どんな種類の仕事をしていたかが明確に伝わると、選考もスムーズに進みます。

英語力がある方は、それも強みになります。TOEICスコアや英文メールの対応経験などがあれば、積極的に記載しましょう。特許事務所では、外国出願を扱う機会も多く、英文書類の取り扱いや海外とのやり取りがあるため、英語に慣れている方は歓迎される傾向にあります。

ただし、英語力が必須というわけではありません。高岡IPを含め、多くの特許事務所では国内の案件を多く扱っており、日本語だけで完結する業務も多数あります。事務処理能力やコミュニケーション力がしっかりしていれば、英語が得意でなくても問題ありません。ご自身の得意分野で力を発揮していただければ大丈夫です。

専門知識がないからといって遠慮する必要はありません。特許事務員には、コツコツと丁寧に仕事を進める力が求められています。ご自身の経験を活かし、安心してチャレンジしてみてください。

差し支えなければ、家族構成や育休の取得状況も

最近ではプライバシー保護の観点から、履歴書に家族構成(子どもの有無など)を記載しないことが一般的になりつつあります。実際、多くの履歴書フォーマットでは記載欄がなく、記載を省略する方も増えています。

しかし、特許事務所の採用においては、欠員の補充やチームバランスを考慮して選考が行われることが多いため、特に女性の場合、家族構成や育休・産休の取得経験が選考判断の参考になる場合もあります。たとえば、「育休取得済みで、現在は復帰している」「子どもは小学生で手がかからない」といった情報があれば、今後も安定して働けると判断されるかもしれません。これは特に、育児と仕事の両立を推進している職場において、重要な情報となり得ます。

もちろん、これらの情報は記載は任意ですし、書かないことで不利益になることはありません。

あなたの経験は、きっと活かせる

履歴書や職務経歴書は、単なる経歴の羅列ではなく、「自分が何を学び、どんな仕事をしてきて、これから何をしたいか」を伝えるための大切なツールです。特許事務所への就職・転職にあたり、専門知識の有無にかかわらず、これまでの経験や身につけた力が活かせる場面は必ずあります。

大切なのは、正直に、自分の言葉で書くこと。派手な実績がなくても、誠実に積み重ねてきた日々や、前職で身につけた力は、読む人にしっかり伝わります。

このページで紹介したポイントを参考に、ぜひあなた自身の履歴書を見つめ直し、自信をもって応募に踏み出してください。特許事務所というフィールドで、新たな一歩を踏み出そうとする方のチャレンジを、心から応援しています。